生薬の花

セイヨウタンポポTaraxacum officinale Weber(キク科)

セイヨウタンポポの花

セイヨウタンポポの花

カントウタンポポの花

カントウタンポポの花

蒲公英(セイヨウタンポポの全草)

蒲公英(セイヨウタンポポの全草)

セイヨウタンポポの根

セイヨウタンポポの根

 タンポポはとても身近な植物の1つで,日本各地の荒れ地や道ばたで見ることができます。春の到来を思わせる黄色い花と,綿毛となって飛んでいく種子は誰もがよく知っています。しかし,これほどまでに知られている植物であるにも関わらず,植物分類上,みんな同じタンポポを見ているというわけではないのです。例えば,日本ではカンサイタンポポ,カントウタンポポ,エゾタンポポ,シロバナタンポポなど実に数十種類のタンポポが確認されます。すべてTaraxacum属の植物ですが種が違うと考えられています。地域の名前が付けられていることからわかるとおり,分布に大きな偏りがあります。これら在来種以外に,明治期にヨーロッパから入ってきたセイヨウタンポポもあります。これは季節と関係なく花をつけるため繁殖力が強く,現在,野原で見られるタンポポの多くはセイヨウタンポポです。
 タンポポは頭状花序の花をつけます。1つの花に見えますが,小さな花が集まった形をしていて,花びらに見えるもの一つ一つが独立した花になります。萼に見える部分は総苞(そうほう)と呼ばれ,セイヨウタンポポはこれが反り返るので在来種と容易に区別ができます。花をちぎってみると,「舌」のような一枚の花びらが筒の上に付いているように見えるので舌状花と呼ばれます。一方,「舌」がなくて筒だけの花は管状花と呼ばれます。キクの仲間にはヒマワリのように舌状花と管状花の両方を持つものと,どちらかしか持たないものがありますが,タンポポの仲間は舌状花のみです。もう一つの特徴は,切ると白い乳液がでることです。これは,キク科の多くに見られる特徴ですが,タンポポの仲間には必ず見られます。根は思ったより太く長いため,タンポポを根ごと引き抜くのは容易ではありません。
 開花前の,乾燥させた全草を蒲公英(ホコウエイ)と呼び,解熱,発汗,健胃,利尿などに民間で用いられます。中国では,古く唐代の『新修本草』にタンポポの仲間を乳腺炎に用いるという記載がありますが,これは乳液が出ることと関係があるかも知れません。日本にも古くは「蒲公草」や「フジナ」などと呼ばれたという記録があります。セイヨウタンポポの成分としてカリウムや有機酸の他,タラクサステロールなどのトリテルペンが多く含まれていることがわかっています。
 セイヨウタンポポは別名「ショクヨウ(食用)タンポポ」とも呼ばれ,ヨーロッパでは野菜として利用されています。地上部は少し苦みがあっておいしいのでサラダなどにして食べることができます。また,太い根はきんぴらなどとして食用にできるほか,細かく刻んで煎った根をお湯で抽出するとカフェインレスのコーヒーのようになります。

(川添和義,小池佑果,磯田 進)


注)体質によってはアレルギーなどを起こす場合があります。利用により,万一,体調が悪くなられた場合は医師にご相談下さい。
[参考図書] 難波恒雄 著,『原色和漢薬図鑑(下)』,保育社
牧野富太郎 著,『牧野新日本植物図鑑』,北隆館
三橋博 監修,『原色牧野和漢薬草大圖鑑』,北隆館
村上光太郎 著,『食べる薬草辞典 春夏秋冬・身近な薬木75種』,農文協