薬学と私

第67回カナダで薬剤師

ウォルマート・カナダ 勤務 薬局薬剤師 
苗村 英子 氏

 

日本からカナダへ

 大学卒業後、日本で医療機器および医薬品を扱うメーカーにて3年ほど学術として働いた後、海外に行きたくなり、カナダに来ました。
 カナダの西側ブリティッシュコロンビア(BC)州のビクトリアに住んでおります。カナダというと寒いイメージが強いと思いますが、ビクトリアはほとんど雪が降らず温暖でカナダ人にとっても過ごしやすいためか、定年後の人が数多く住んでおり高齢者が多い街です。
 カナダで薬剤師の資格を取得後、2007年より小児専門病院、介護施設専門薬局での勤務を経て、現在は米国系大手チェーンストアの薬局にて勤務しています。

カナダで薬剤師免許

 最近では、海外で活躍されている方も増えてきているためご存知の方もおられるかと思いますが、カナダで薬剤師免許を取得するには国家試験と州の試験の両方に合格しなければなりません。州によって多少異なるのですが私が住むBC州で薬剤師免許を取得して働く場合、

① カナダ国外で薬剤師免許を取得した薬剤師がカナダでの資格を取得するために審査が行われます。国家試験を管轄しているThe Pharmacy Examining Board of Canada (PEBC)にて書類審査(日本での薬剤師資格証明書、大学卒業証明書、成績証明書 などを全て英文で送付)を受け、Evaluating Exam(審査試験:2日間のマーク式試験)を受験します。

② ①の書類審査と同時または事前にPharmacist's Gateway Canadaという政府により支援されているプログラムに登録します。このプログラムは、①での書類や試験結果のデータベースであり、また、免許取得までの道のりをナビゲーションしてくれる機能も果たしています。

③ College of Pharmacists of British Columbia (州の薬剤師会)へ薬剤師として仮登録をします。出生証明書、大学卒業証明書、①のPEBC審査終了証明書、働けるビザ(ワークビザ、永住ビザ)があることの証明が必要になります。

④ University of British Columbia(ブリティッシュコロンビア大学)の Canadian Pharmacy Practice Program(CP3) コースを受けます。カナダ以外で薬剤師免許を取得した人の為のコースで、カナダで薬剤師として実務を行えるようにいろいろと学びます。内容は3ヶ月の授業と500時間のインターンシップ(薬局研修)で構成されています。受講には、TOEFL, IELTSなどの語学試験の規定スコアが必要です。カナダの公用語は英語とフランス語ですが、BC州では英語が使用されます。

⑤ PEBCが実施する薬剤師試験を受験します。試験は2部構成で、Part1はMCQ(多肢選択式)試験、これは私が受験した時は筆記でしたが現在は試験会場でコンピューターを使って行われているようです。そして、Part2はOSCE(客観的臨床能力試験)で、実技(口頭)試験となります。どちらも、チャレンジできるのは3回までと決められています。

⑥ College of Pharmacists of British Columbia (州の薬剤師会)のJurisprudence exam (法律の試験)を受験します。

⑦ これらの全てを終えて、州の薬剤師会へ薬剤師として登録し、薬剤師免許取得となります。

 免許取得には、時間だけでなくお金も必要となります(大学コース受講料と試験代が主です)。しかし、免許を所得してカナダで薬剤師として働くことは可能ですし、大学に何年も通い直す必要はありません。
 免許取得の際、働くことが可能なビザの証明が必要になりますが、永住ビザやワークビザ(これは雇用主に出してもらわないといけません)の取得が難しい場合は、ワーキングホリデービザを使う方法もあります。ワーキングホリデービザは、申請時に30歳以下であれば申請可能です。

カナダでの医療事情

予防接種は薬局で

 カナダでは、2009年にインフルエンザH1N1ウイルスが流行した時,インフルエンザの予防接種を行う医師や看護師が十分に確保できないという理由から、薬剤師の職能の拡大として予防接種が行えるようになりました。薬剤師は、予防接種のトレーニングを受けた後、5歳以上であれば誰にでも予防接種を行うことができます。BC州では毎年ハイリスクの人(65歳以上、慢性疾患を抱えている人、医療従事者など)の条件を満たしていれば、インフルエンザの予防接種は無料で受けられるので、どこの薬局もワクチンが入荷するとかなり忙しくなります。

カナダの医療制度

 国民皆保険制度があり、各州ごとの公的な医療保険(日本でいう国民健康保険)に入れば、原則として通院も入院も医療費はすべて無料、手術も検査も一切費用はかかりません。眼科、歯科の診療、薬代は基本的に適応外となり自己負担、または個人加入の医療保険が別途必要になります。カナダでの最大の問題点は、医療機関へのアクセスの悪さ、待ち時間の長さです。救急病院に行っても重症度によって振り分けられるので、症状により3~5時間待ちというのもよくあることです。専門医については家庭医の紹介なくしては受診できないシステムになっているので、医師数の少ない科(整形外科、皮膚科など)では、数ヶ月後から1年先にしか予約がとれない状況です。(個人的には、日本の様に何割か払ってでももっと早く診てもらいたいです。) その分、身近な薬剤師の存在はカナダでは非常に頼りにされ、日々様々な相談をされます。

マリファナ(大麻)合法化

 また、日本では大麻取締法で禁止されている大麻ですが、カナダでは医療用大麻は医師の処方箋をもとに販売ライセンスを持つ店鋪(大麻薬局:一般の薬局ではなく専用の薬局になります)で購入できます。さらに、今年の10月17日より完全合法化となりました。政府としては合法化することによって子供達の薬物乱用を防ぐ目的と犯罪組織への収入源を断絶でき、お酒やタバコの様に税収アップにも繋がると考えているようです。18歳以上であれば、最大30グラムの乾燥大麻所持を許可されます。

終わりに

 私が、カナダで薬剤師になって10年ちょっと経ちますが、今後も地域の患者さんに信頼されるような薬剤師を目指しながら精進したいと思います。皆さまには、カナダでの薬剤師事情を少しでも知っていただきたく、述べさせてもらいました。